「PDFで送ってください」。この一言は便利だ。環境が違っても見た目が崩れにくい。印刷もしやすい。完成した書類を固定して渡すには、かなり優秀な形式だ。
なのに、仕事の途中でPDFが登場すると急に往復が増える。なぜか。
PDFは「完成」に強い
PDFは紙に近い。見る位置が固定され、相手のアプリに左右されにくい。その強さは、裏返すと変更しにくさでもある。
まだ内容が動く段階でPDFにすると、受け手はコメントを書き、送り返し、作り手は元データへ戻って修正し、もう一度PDFを書き出す。「3ページ目の右下、昨日の数字に戻してください」という、人類がファイルに合わせて働く時間が始まる。
本当の問題はファイル形式ではない
遅くなる会社では、ひとつのPDFに複数の役割を背負わせている。
- レビュー用
- 承認用
- 保管用
- 印刷用
- 外部提出用
この5つは同じ「書類」に見えるが、必要な機能が違う。レビューなら共同編集やコメント履歴が欲しい。承認なら誰がOKしたかが重要。保管なら検索性と版管理が大事だ。
「PDF禁止」ではなく、出すタイミングを遅らせる
文章なら共同編集できる文書、数字なら表計算、デザインなら元の制作データ。変更が続く間は変更できる場所に置く。PDFは外へ出す直前のスナップショットにする。
これだけで「PDFを直す」という妙な仕事が減る。
PDF自体は悪くない。完成したものを固定する能力は今も強い。問題は、まだ生きている仕事を早すぎる段階で凍らせることだ。
「PDFで送ってください」と言われたら、形式を変える前にひとつ聞くといい。これはもう完成ですか?