Excelは古い。そう言われてから、かなり長い。なのに月末になると売上表が飛び交い、名簿は .xlsx で届き、システムから吐いたCSVは最後にExcelで開かれる。
これは「会社が遅れている」だけでは説明できない。Excelがしぶといのは、データベース、計算機、メモ帳、簡易フォーム、帳票、グラフ、そして人間同士の受け渡し箱を、ひとつの画面で雑に兼業できるからだ。
Excelは完成品ではなく、作業台だ
専用SaaSは正しい入力欄と正しい順番を要求する。Excelは違う。列を増やしてもいい。色を付けてもいい。途中の計算式を横に置いてもいい。「今日だけこの顧客を別枠にしたい」という例外にも、10秒で対応する。
業務は例外だらけだ。だから、整っていない現場ほど自由度の高い表計算が強い。問題は、その自由さがそのまま会社の記憶装置になった瞬間に始まる。
危険になる境界は「行数」ではない
1万行あるから危険、100行だから安全、ではない。見るべきは人数と状態変化だ。
- 同じファイルを複数人が更新する
- 「最新」がどれか分からなくなる
- 顧客や案件にステータスがある
- 誰がいつ変えたか追いたい
- ファイルから別システムへ何度も転記する
このあたりが増えると、表計算の自由さは便利さではなく調整コストになる。メール添付で 顧客一覧_最新版_修正2.xlsx が生まれたら、だいたい黄色信号だ。
それでもExcelを消さなくていい
全部をCRMや業務システムへ移せば解決、でもない。現場では「考える途中」のデータがある。仮説を並べ、数字を試し、列を足して意味を探す作業は表計算が速い。
だから分ける。確定した状態はシステムへ、考える途中は表計算へ。 顧客・商談のように履歴を共有するものはCRMへ寄せ、集計や一時分析ではExcelを使う。CRMの考え方を知りたいなら、HubSpotを含むCRMの見方も参考になる。
Excelが2026年も残っているのは、古いからではない。雑な現実に強いからだ。
ただし、雑な現実をそのまま永久保存する場所にした瞬間、Excelは道具から地層になる。会社はときどき、その地層を掘っている。